今日はまたコラム再掲いきます!
今回も結構深い話になるかな?
では早速どうぞ!
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#60 バランス
(2008年12月3日)
各球団ファン感謝デーも終わり、いよいよ本格的なオフシーズンに入りました。ファンの皆さんにとっては寂しい日々に突入といった感じでしょうけど、僕は今後に向けてもう既に頭の中が一杯ですね…と言うより、「イッパイイッパイです」と表現した方が正しいかも…
今の僕は、まず12月15日に控えているディナーショーの準備に追われています。今回の場合普通のイベントとは違って、全責任が自分の肩にのしかかってくる感覚がありますからね。ましてや料金もそれなりのディナーショーとあれば、ハンパなことはできない。チケットも発売と同時にかなりの勢いで売れたみたいですから、かなりのプレッシャー感じてます。でも、実を言えばこっちもかなりの奥の手と言うか、サプライズ演出を目論んでるんですよ。一体どんな反応が返ってくるのか、楽しみでもあります
ディナーショーが終わっても、冬の間はイベントが結構目白押しです。きっと僕にとっては、オフなんてアッと言う間に過ぎてしまうんでしょうね。そして春が来ればまたシーズンが始まって…。来シーズンの演出とかについても、今年はオフが早く来た分、いろいろと新しいことを仕掛けたいんですよ。いつも「ネタ帳」を持ち歩いては、何か思い付くたびすぐメモるようにしてます。
ところで。新しい仕掛けを考えるのはいいんですが、その上で僕が気を付けるようにしている、あるひとつの事柄があります。
僕達は、常に「新しいこと」「より面白いこと」を求めようとする習性がある。それはある意味当然と言うか、お客さんに「見せる」側としては持っていなくてはならない意識でしょう。ファンは、僕達が何かすれば、次はよりオモシロいもの、より高いレベルのパフォーマンスを求めてくるのが常です。僕達だって、そんな要求に何とか応えようと必死でもがく。そんな中で僕達は鍛えられていくのだろうし、そうやってエンターテインメントというのはこれまで発展してきたのだろうと思います。
だけどそうこうしているうちに、ともすると僕達が陥りやすい「錯覚」があります。それは、僕達が「やりたいこと」と、ファンの側が「やってほしいこと」との混同。「僕達がやりたいこと」と「ファンが僕達にしてほしいこと」──両者が一致すれば、確かにそれは理想的です。しかし、実際はそうでもないことが往々にしてある。僕達は上を、上を目指すあまり、「自分のやりたいこと」ばかりに目が行ってしまい、「ファンが僕らマスコットに何を求めているのか」に思いが行き届かなくなることはないだろうか?
あるミュージシャンが、以前こんな感じのことをインタビューで語っていました。コンサートの時、自分の「歌いたい曲」と、ファンの「聴きたい曲」は必ずしも同じとは限らない。ファンはやはり、いわゆる「定番」と呼ばれるヒット曲を聴きたい人が多いし、一方自分としては、新曲や自分の思い入れのある曲を歌いたいと思う。だから、ツアー前にコンサートの選曲をする時は、両者をバランス良く取り入れるようにしている、と。「定番」のヒット曲は、もうさんざん歌ってきて新鮮味に欠けることもあるけれど、ファンが求めているのであれば、そしてそれを聴いてファンが安心できるのであれば、やはり外すことはできない、と。
僕達についても、同じことが言えると思います。ファンがマスコットに一番求めているものって何だろう?──そう考える時、特に僕の場合「いつも手の届く場所にいてくれること」、つまり「安心感」のようなものだと思うんですよね。常々言うように、僕らマスコットの使命は「選手とファンとの架け橋」だと僕は思っています。なかなか手の届かない選手に代わって、選手と同じフィールドにも立つ僕達がファンとふれ合う。だから、いくらオモシロいパフォーマンスをしようと、そればかり追い求めるあまりファンとの距離が遠くなってしまうのは、少なくとも僕の目指すスタイルではないんです。
試合にしろイベントにしろ、内容を決めていくうえで僕がまず最初に押さえておくのは、ファンとのふれ合いの時間です。そのうえで、いかに楽しいネタを散りばめていくかに思いを巡らせる。真夏の暑い日や超満員の試合なんかで多くの人相手に長時間グリーティングするのは、正直言って体力的にも精神的にもキツいものはあります。だけど、ファンが僕らとのふれ合いを求めて来てくれるのならば、その期待を裏切るわけにはいかない。でもだからと言ってずーっとふれ合いばかりになってしまっても、見る側にとっては面白味に欠けてしまう。その両者のバランスを上手く取りながら、ファンサービスとパフォーマンスをきちんと両立させていくのが、僕の目指す理想のマスコット像なんです。
パフォーマンス自体の中身についても同じですね。「自分が何をしたいか」ばかりでなく、「お客さんが何を見たいか」にも考えを巡らせる必要がある。マスコットは楽しくなければ意味がない、と言う人もいるでしょう。確かにそれは間違いじゃありません。でもその「楽しさ」は自分だけの楽しさだけじゃなく、ファンの側にとっても「楽しい」ものでなくてはいけない。自分のやりたいことばかり先行してお客さんが置き去り状態では、それは単なる「自己満足」です。
どんな世界にしろ、一芸を極めてる人は、そのパフォーマンスが相手にしっかり伝わっている。それは、相手の求めているものをきちんと理解しているからだと思うんですよね。マスコットの世界も、求められるものはキャラによってさまざまだとは思います。でもどんなスゴいパフォーマンスをするマスコットより、そういった「ファンのハートの掴み方」の上手いマスコットの方が、僕は見てて「スゴいなぁ…」と心を動かされるんです。
来シーズン、僕がどれだけ新しいことにチャレンジできるかはまだわかりません。ただ、攻め続けるばかりが「勇気」だとも思いません。良いもの、ファンが求めているものはしっかり残しつつ、不要な部分は省いて新しい試みに変えていく──これが僕の求めていくスタイルです。僕はまだまだ未熟者ですけど、いつも手の届く所にいて、ファンと共に歩んで行く気持ちだけはずっと失わずに持ち続けていきますから。──もちろん、それを言い訳に新たなチャレンジを放棄するつもりはサラサラありませんけどね!
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コラムも回数を重ねてくごとに
だんだんと深い話が多くなってきますね
この回に書いたことも、
僕が「いつか伝えたい」と
ずっと思ってた内容でした。
僕の場合、幸いなことにデビュー早々
いろんなパフォーマンスが
好評をいただいたんだけど、
最初にウケちゃうとその後
「もっと面白いネタ生み続けなきゃ!💦」
ってプレッシャーが結構キツいんですよね。
僕もそんなプレッシャー感じてました。
でも、文中にある某ミュージシャンの
言葉を目にしたこともあったりして、
ちょっと気が楽になった部分がありました。
「…あ、常に新しいことを求めるのだけが
必ずしも正解じゃないんだ!」って。
僕らパフォーマーって、
「演る側」と「観る側」があって成り立つモノ。
どっちかの押し付けがあっちゃ
心地良いバランスにならないと思うんですよね。
だから、グラウンド上の小ネタを考えたり
新しい企画を考えたりする時には
僕は「お客さんが今何を欲してるのか?」
これを第一に考えるように心掛けてました。
まぁ、僕もいろんな失敗や恥ずかしい思いを
経たうえでココに至ってるんですけど
だから本文にも書いたとおり、
他のマスコットのパフォーマンス見る時には
「お客さんにちゃんと伝わってるのか?」
って点にどうしても目が行きますね👀
よくありがちなのが、
試合前のフリーな空き時間とかに
マスコットがあの広いグラウンドの中で
自分達だけでなんか楽しんじゃって
スタンドからは何やってんだか
よくわかんない、ってパターン。
僕はコレやらないように意識してました。
やるんだったらお客さんにも伝わるように
分かりやすく動くとか、
ビジョンのカメラが抜いてくれそうなら
それを利用して伝えたりとかしてましたね。
まぁ、マスコットを見るのに
いちいちそんなこと考えてる人は
あんまりいないかもしれないけど
そういう視点から
いろんなマスコットを見てみると、
ちょっと見方が深くなるかもですよ
ちなみに今回のアイコンには、
このコラム直後に開いた第1回の
ディナーショー写真を使いました。
このディナーショーも
「何やったら一番喜んでもらえるのかなぁ?」
ってことをさんざん頭捻って考えて
創った内容でしたね~
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